
微細加工をレーザーでおこなうとこんなデメリットが!ウェットエッチングなら解決できます
2025.04.30
近年、精密機械や電子機器の製造において高精度な微細加工が必要とされています。微細加工をおこなう方法の中でもレーザー加工による微細加工は精度が高い方法です。この方法にはメリットがある一方、物理的な方法で加工する故のデメリットは避けられません。今回は、レーザー加工による微細加工のメリットとデメリットをわかりやすく解説します。そして、デメリットの影響を受けないウェットエッチングについても解説します。レーザー加工による微細加工を採用するかどうか迷っている方の一助になれば幸いです。ぜひご一読ください。
レーザー加工による微細加工とは?
微細加工とは、一般にマイクロスケール単位の精度を必要とする加工です。近年、精密機械や電子機器の小型化に伴い、部品の小型化が顕著であり、これらの製造に対応するべく微細加工がさらに重要になってきました。
中でもレーザーを用いた微細加工は加工精度が高い加工方法です。さらに複雑な形状を一度に加工できるため、ある程度の量の高精度の製品を生産したい場合に使用されています。
レーザー加工による微細加工では、材料に工具などが直接触れることはありません。そのため、加工面にダメージを与えにくく、より高精度の製品を効率的に製造することが可能です。このことから、医療機器や精密電子機器の製造において、微細かつ複雑な構造の製品を作るために広く利用されています。
レーザー加工による微細加工の種類
レーザー加工による微細加工は、微細加工技術の中でも高い精度を担保できるため、医療機器や半導体などの電子部品、航空分野、自動車分野で活用されています。レーザー加工による微細加工の特徴は、ピンポイント状のレーザーを照射して細かな加工を施し、自由度の高い加工をおこなえることです。
レーザー加工による微細加工には、例えば以下のような加工があります。
- 微細穴加工
- 微細溝加工
- 微細切断加工
- 微細マーキング
- 薄膜除去
- 微細溶接
レーザー加工による微細加工の原理
レーザー加工では、レーザーを被加工物(ワーク)に照射し、ワークの所定部分を溶融させて加工します。ここではレーザー加工機の仕組みとレーザー光の種類について解説します。
レーザー加工機の仕組み
レーザー加工機は、レーザー光を発生するレーザー発振器を含むレーザー発振器系、レーザー光を伝送し集光する加工光学系、ワークを固定するためのテーブルとワークよりなる加工物質系で構成されます。そして、加工光学系から収束したスポット状のレーザーをワークに照射することで、ワークを溶融させて加工します。
加工光学系の構成は、レーザーを伝送する反射ミラーや光ファイバーよりなる光路、伝送したレーザー光を集光・照射する集光レンズなどを含む集光系の構成です。
加工物質系は、ワークを載置するテーブルと、テーブルを動かす駆動システムを含みます。駆動システムによりテーブルを動かすことで、ワークを移動して集光レンズとの位置関係を変えられます。駆動システムはテーブルの移動速度も制御でき、ワークの加工したい部分にレーザーを必要な時間で照射することが可能です。これにより、ワークを所定の形状に加工できます。
レーザーの種類
微細加工に使用されるレーザーとしては、以下のようなものがあります。
- 近紫外線レーザー
- 遠紫外線レーザー
- 超短波パルスレーザー
近紫外線レーザーは、マイクロ加工や微細穴加工、薄膜表層加工などに使用されます。
遠紫外線レーザーの用途は、微細穴加工や大面積加工、リソグラフィーなどです。
超短波パルスレーザーは、非常に波長が短いレーザーです。透明体内部加工や3D光導波路加工、高機能非熱加工などに使用されます。
レーザー加工による微細加工のメリット
レーザー加工による微細加工は、さまざまな加工に対応でき、以下のようなレーザー加工ならではのメリットがあります。
- 作業効率が良好
- 仕上がりがきれい
- 微細で複雑な加工が可能
- メンテナンスの手間がかからない
- 加工の自由度が高い
以下に順を追って解説します。
作業効率が良好
金属を加工する場合、通常は金型が必要です。金型を使う場合、均一な製品を大量生産するには、定期的な金型の位置調整が必要になります。また、製品ごとに金型を交換し、その都度、位置調整しなくてはなりません。つまり、手間と時間がかかり、作業効率が悪い場合があります。
しかし、レーザー加工では、プログラムに応じて加工をおこないます。すなわち、一度プログラミングをすれば、均一な製品の大量生産も、異なる種類の製品の生産も可能です。作業効率はいいといえるでしょう。
仕上がりがきれい
微細加工の技術として一般的な切削加工などでは、ワークを機械的に削るため表面に粗さが残ることがあります。その場合は、研磨などの後処理が必要です。
これに対し、レーザー加工は熱によって溶融して除去するため、表面がきれいに仕上がります。よって研磨などの後処理が不要です。
微細で複雑な加工が可能である
先ほどの金型を使った加工では、形状の複雑なものに関しては複数の金型を組み合わせて使用して加工するため、手間と時間がかかります。
これに対してレーザー加工では、図形データに基づいてプログラミングをおこなって加工するため、微細で複雑な形状であっても比較的容易に加工できます。また、手間や時間が少なくすみます。
メンテナンスの手間がかからない
切削加工など刃物を使う場合は、精度を保つために刃物などのメンテナンスが必要です。これに対し、レーザー加工の場合は、材料と工具が接触しないため工具のメンテナンスが不要です。レーザー加工の場合は、ミラーやレンズの清掃程度で済み済み、交換作業も必要ありません。つまり、メンテナンスの手間がかからず、作業効率の向上にもつながります。
加工の自由度が高い
レーザー加工では、金属以外に樹脂も加工でき、対応可能な材質が広範囲です。さらには、プログラムに応じた加工なので加工の自由度が高いのが特徴です。
これらを踏まえると、レーザー加工による微細加工では加工精度が高く、さらに複雑な形状を一度に加工できる点にメリットがあります。また、材料に直接触れないため、加工面にダメージを与えにくく、高精度の製品を効率的に製造することができます。
レーザー加工による微細加工のデメリット
レーザー加工による微細加工には、レーザー加工ならではの以下のようなデメリットもあります。
- 設備が高価である
- レーザー加工に適さない材料がある
- 大量生産が難しい
以下に順を追って解説します。
設備が高価である
レーザー加工をおこなう場合、高価な設備が必要です。他の方法よりも初期費用が高価になります。また、メンテナンスの手間は少ないものの、消耗品の交換費用や保守、修理コストはかかります。他の方法の装置よりもそれぞれの単価が高いため、初期費用だけでなくランニングコストが他の方法よりも高価になる点はデメリットです。
また、作業者の対策も必要で、専用の保護具の着用、反射光や散乱光の遮光対策などの環境整備が必要になります。
レーザー加工に適さない材料がある
レーザー加工は加工できる材料が広範囲ですが、光を照射して加工する方法であるため、銅やアルミなどの反射率が高い金属の加工ができない場合があります。また、ワークを溶融させて加工するため、厚さが厚すぎる材料の加工もできない場合があります。
大量生産が難しい
レーザー加工はワークを溶融して加工するため、複雑で細かい加工を高精度でできます。しかしながら、1つの製品を仕上げるスピードはそれほど速くはありません。そのため、生産効率が悪くなる、生産コストが高くなる傾向があります。
物理的な微細加工における課題
レーザー加工による微細加工には、上記のようなメリット・デメリットがありました。レーザー加工では、加工速度が遅く、生産速度や生産効率に影響する場合もあります。
また、物理的な加工方法であり機械を使うレーザー加工には以下のような課題もあります。
- 精度の高い加工機が必要
- 振動の対策が必要
順番に解説します。
精度の高い加工機が必要
当然のことながら、加工機の精度はワークの加工精度に直接影響するため、精度の高い加工機を使用することが重要です。
元々精度の高い加工機を使用していても使用するうちに加工機には変化が生じます。そのため、定期的に十分なメンテナンスをおこなう必要があります。
振動の対策が必要
微細加工は、マイクロスケール単位の精度を必要とする加工です。そのため、加工機や周囲のわずかな振動が加工精度に大きく影響することが懸念されます。加工機や周囲の環境からの振動を抑制するための対策が重要です。
これらの課題の影響
これらの共通の課題を解決するためには、新たな手間や時間、人件費も必要です。これらの経費は生産コストに上乗せすることになり、生産コストが上昇してしまいます。
微細加工にはウェットエッチングがおすすめ
レーザー加工による微細加工のデメリットにお悩みの方、これらに影響を受けることなく微細加工の加工精度を確保でき、製品の品質を担保できるウェットエッチングを検討してみてはいかがでしょう?
ウェットエッチングの特徴
ウェットエッチングは物理的な加工であるレーザー加工による微細加工とは異なり、化学的な手法で微細加工をおこなう方法です。ウェットエッチングは、金属が薬品に溶解する現象を利用して金属除去をおこなっています。半導体や電子回路基板の製造などによく利用されていますが、部品の製造なども可能です。
ウェットエッチングのメリットは、接触による負荷や機械的な力を加えずに高精度な加工を可能とする点です。次に具体的な工程を見てみましょう。
ウェットエッチングの具体的な工程
ウェットエッチングでは、例えば金属板に丸い穴を開けたい場合は、穴を開ける部分以外を溶けないように保護します。そして、保護されていない露出している金属部分だけを溶解して穴を開けます。
詳しい工程は、以下の通りです。
- パターンフィルム(露光用原版)を作成する
パターンフィルムは、エッチング加工する金属板に保護膜を作成する際に被せるフィルムです。フィルムには、作成するパターンと同一の形状が作製されています。例えば、金属板に丸い穴を開けたい場合は、所定の位置に丸い穴パターンがあるフィルムを作成します。 - 金属板の準備・前処理をする
金属板表面をきれいにして後工程のフォトレジストの密着度を高めます。
具体的には脱脂や酸洗および水洗などをおこない、金属板表面に付着している油分ほこりを取り除くとともに、金属板表面を活性化させます。 - 金属板の上にフォトレジストを成膜する
例えば、フィルム状のフォトレジストをラミネートしてフォトレジスト層を成膜します。 - パターンフィルムをフォトレジストに被せる
- フォトレジストを露光させてパターンフィルムの形状を転写する
フォトレジストに光を当てると、パターン形状通りに露光されます。 - フォトレジストを現像する
現像すると、フォトレジストで覆われていない部分の金属面が露出します。 - 薬品で溶解させる
金属板の露出している部分を薬品で溶解させ、除去します。 - フォトレジストを除去する
金属板を保護していたフォトレジストを除去し、所定のパターンが形成された金属板を取り出します。 - パターンが形成された金属板を洗浄および乾燥する
金属板の洗浄・乾燥をおこなうとともに、品質検査を実施します。
以上のような工程を経てウェットエッチングによる加工がおこなわれます。
工程からも分かるように、ウェットエッチングでは機械的および物理的な加工を施しません。そのため、レーザー加工による微細加工のように条件をコントロールしたり加工時の機械的な条件や環境条件などをシビアにコントロールする必要はありません。ウェットエッチングを使用すれば、条件をシビアにコントロールすることなく、高い加工精度を得ることができ、製品の品質も担保可能です。
金属へのエッチング加工なら豊富な技術・経験を持つ株式会社ケミカルプリントへ
ウェットエッチングのメリットがお分かりいただけたと思います。レーザー加工による微細加工のデメリットにお悩みの方、ウェットエッチングでの加工を検討なさってみてはいかがでしょう?
株式会社ケミカルプリントは、60年にわたりエッチング加工をはじめとした金属加工に向き合っています。60年の間にさまざまな用途や品質基準をクリアしてお客様のご要望に応えてきました。経験に裏打ちされた技術・経験や実績は、きっとお客様のお役に立つことでしょう。
株式会社ケミカルプリントは、微細・極小・極薄製品の加工を得意としています。特に5ミクロン厚の極薄製品や、0.1mm未満の穴あけ加工など加工限界を狙ったエッチング加工製品を高精度で提供しているのが特徴です。
経験豊富であることから、加工方法についても知識や技術を多く持ち、オーダーされた方法以外の方法を提案する提案力も持っています。実際の加工も熟練したスタッフが高い技術力で効率的におこない、お客様にご満足頂けると思います。
フィルム補正や、パターン転写後のレジストの除去、品質基準にのっとった検品など、エッチング加工では手作業の工程が多く含まれます。これらの工程は熟練した技能と経験をもったスタッフの能力によって大きな差が出るのも事実です。株式会社ケミカルプリントでは、技術力が高く経験豊富なスタッフが手作業に対応しており、お客様に高品質な仕上がりを評価いただいております。また、ハーフエッチングにおいて貫通しない穴や溝の高精度な深さ調整も得意としております。
ウェットエッチングによる金属の微細加工をお考えなら、株式会社ケミカルプリントに相談なさってみてはいかがでしょう?
まとめ
今回の記事では、レーザー加工による微細加工の技術について解説し、メリットおよびデメリットについても解説しました。
さらに、化学的な手法で金属除去をおこなうウェットエッチングについても解説しました。ウェットエッチングでは、物理的な加工をおこなうレーザー加工による微細加工と比べて、条件をコントロールしたり加工時の機械的な条件や環境条件などをシビアにコントロールする必要はありません。その状態で、高い加工精度を得ることができ、製品の品質も担保可能です。
そのため、高精度の加工を実施しても、生産速度や生産効率の低下および生産コストの上昇も起こりません。
微細加工では、微細な加工を高精度でおこなうため、加工の失敗や不良を減らすことも可能です。これにより、品質の向上だけでなく、材料の無駄を削減して製造コストを削減することも可能です。材料の無駄の削減は、環境負荷の削減につながり、持続可能な製造プロセスの実現にもつながります。
つまり、微細加工をウェットエッチングでおこなえば、環境負荷を削減するとともに、高い生産速度や生産効率で生産コストの上昇を招くことなく、高精度の微細加工が可能です。
金属のレーザー加工による微細加工の検討で迷っている方、一度ウェットエッチングでの加工をご検討頂いてはいかがでしょう?
その際には、60年にわたってエッチング加工をおこなってきた信頼のおける株式会社ケミカルプリントに相談してみてください。きっと、あなたのご期待に応えられると思います。