TOPICSトピックス

  • ホーム
  • トピックス
  • エッチング加工でステンレスを加工|他の加工方法との違い・メリット・具体例も解説

エッチング加工でステンレスを加工|他の加工方法との違い・メリット・具体例も解説

2025.01.23

カテゴリー: 技術ブログ

錆びにくい、強度が高いなどの特徴を持つステンレスは様々な製品に使用されています。ステンレスをはじめとした金属の除去加工としては、切削加工やプレス加工のような機械的な加工が思い浮かぶかもしれません。もちろん、機械的な加工が多用されているのは事実です。しかしながら、微細な製品や高精度な形状の加工、高精度の表面粗さが求められる加工の場合にはエッチング加工が非常に有用です。この記事では、汎用性の高いステンレスのウェットエッチングについて解説します。ステンレスの加工方法としてウェットエッチングを検討されている方のお役に立てば幸いです。

ステンレスはエッチング加工できる?

ステンレスは加工されて様々な製品として使用されています。ステンレスの一般的な加工方法としては、切削加工、プレス加工やレーザー加工などが挙げられます。この中でも、切削加工やレーザー加工は微細な加工をおこなう方法として好適です。ステンレスは、これら機械的な加工以外に、化学的な加工であるウェットエッチングでも加工可能です。

ここで、具体的な加工例をお見せします。

ステンレス エッチング加工 スケール 板厚0.3ミリ

引用:https://www.chemical-print.co.jp/topics/20241009-1/

この例では、スケールを作製しています。文字や切り抜きで形成したクリップ部をウェットエッチングで加工しています。

ステンレスとは

この章では、ステンレスについて解説します。

ステンレスとは

ステンレスは、正式にはステンレス鋼といいます。炭素含有量が1.2%以下でクロム含有量が10.5%以上の鋼です。材料記号は「SUS」で日常生活でもよく目にしている金属です。この記事では、以降、ステンレスと表記します。

ステンレスの特徴は以下の通りです。

  • 錆びにくい
  • 耐熱性に優れている
  • 強度が高い
  • 衛生面やデザイン性に優れている
  • リサイクル可能である

ステンレスが錆びにくく耐食性が高いのは、ステンレスに添加されたクロムの働きによるものです。クロムはステンレスの表面に「不動態被膜」を形成します。この膜が、錆びやすい鉄の成分を保護するため、ステンレスは錆びにくく耐食性が高いのです。ステンレスにはクロム以外の様々な元素を持つものがあり、元素に由来した特性を持ちます。

ステンレスの用途

ステンレスは様々な分野で使用されています。例えば、以下のような分野で使用されています。

用途 具体例
建築資材 浴槽、屋根材や内装材および外装材など
土木資材 トンネル内装板や水管橋、貯水槽など
厨房器材 シンク、食器やカトラリーなど
家庭用品 表札や郵便受箱、はさみなど
ホビー・ネオン ゴルフ用品や釣り道具など

 

以上は比較的大きなものですが、以下のような微小なものにも使用されています。

用途 具体例
精密機器 IT機器やカメラボディ、時計部品など
家電部品 洗濯機や冷蔵庫などの部材

中でも家電の部材や精密機器などは耐腐食性が高いステンレスの性能を生かしたものです。これらにおいては、精度の高い加工も求められます。

ステンレスの種類

ステンレスには種類があります。大きく、以下の3種類に分類されます。

  • オーステナイト系(SU304・SUS316等)
  • マルテンサイト系 (SUS410・SUS420等)
  • フェライト系(SUS430等)

これらの種類を簡単に解説します。

オーステナイト系(SU304・SUS316等)

オーステナイト系のステンレスは、炭素含有量が0.15%以下でクロム含有量が16〜20%、ニッケル含有量が8%以上のステンレス鋼です。クロムとニッケルを含有しているため、耐食性および耐熱性に優れます。ただし、焼入れができないことからマルテンサイト系よりも硬度が低くなります。

オーステナイト系のステンレスは、ステンレスの中で最も生産量が多いステンレスです。フォークなどのカトラリーといった家庭用品から自動車部品のような精密部品までカバーできる汎用性の高い材質です。

マルテンサイト系 (SUS410・SUS420等)

マルテンサイト系のステンレスは、炭素含有量が0.1〜0.4%、クロム含有量が12〜18%の鋼です。オーステナイト系ステンレスとは異なり、ニッケルを含みません。

マルテンサイト系ステンレスの大きな特徴は、加工時には柔らかく、製品となった後は硬いという性質です。そのため、比較的加工しやすい材質といえます。強度はステンレスの中で最も高いものの耐食性で他のステンレスよりもやや劣ります。

焼入れが可能で、硬度が高いマルテンサイト組織を形成できることから、強度を必要とする刃物やタービンブレードなどの部品に好適です。

フェライト系(SUS430等)

フェライト系のステンレスは、主要な化学成分が鉄とクロムでありクロム含有量が18%程の鋼です。マルテンサイト系ステンレスと同様に、ニッケルを含みません。耐食性が高いのが特徴です。また、焼入れ処理を施しても硬化が少なく、プレス加工に向いています。

耐久性があまり高くないため、強度が必要な部品や、長期にわたって負荷がかかる機械部品には向いていません。しかし、安価で優れた耐食性を持つため、自動車部品や建物の内装材の材質として使用されています。また、磁性を持っていることも大きな特徴です。

ステンレスを加工するには?

この章ではステンレスの加工方法について解説します。

ステンレスの加工方法

ステンレスの一般的な加工方法としては、以下の方法が挙げられます。

・プレス加工

・レーザー加工

・切削加工

・ウェットエッチング

順番に解説します。

プレス加工

プレス加工はその名の通り、プレスにより金属加工物(ワーク)を曲げたり切断したりする加工方法です。切断の際に所定の型どおりの金型を利用して所定の形にくり抜くことも可能です。

レーザー加工

レーザー加工は、レーザー光によってワークを融解させて穴あけや切断をする加工方法です。レーザー光を調整すれば彫刻のように彫りを施すことも可能です。レーザー光で加工することから繊細な加工が行えます。切断箇所などのバリやワークが反ってしまうことが少ないのも特徴です。

切削加工

切削加工は、ワークを刃物で削りとって穴をあけたり所定の形状に加工する方法です。刃物もしくは加工物のどちらかを回転させ、相対的に刃物がワーク上を移動するようにしてワーク表面を削り取ります。

ウェットエッチング

ウェットエッチングは、金属が薬品で化学的に溶解される現象を利用して加工をおこなう加工方法です。溶解する部分を決める保護層(マスキング)の細かさで加工の画線を決められるため、非常に微細な加工が可能です。加工によりバリや歪みが発生しないという特徴もあります。

加工方法の比較

これまで述べた加工方法の中で、微細加工をおこなう方法としては、ウェットエッチング、レーザー加工、切削加工が好適です。これらの特性を比較すると、以下の通りとなります。

ウェットエッチング レーザー加工 切削加工
コスト(少量生産)
コスト(大量生産)
納期(少量生産)
納期(大量生産)
量産性
イニシャルコスト ◯(安価) ◎(不要) ◯(安価)
バリ・歪みの発生頻度
微細・多穴加工
極薄材

各加工は、このような特性を持ちます。ただし、ステンレスはレーザー加工のレーザーを反射してしまうことがあり、装置を破損する可能性もあります。また、ステンレスは、熱伝導率が低いため、切削加工で発生する熱を逃がしにくい材質です。そのため、切削部の温度が高くなりやすく、難削材とも呼ばれています。

これに対し、ウェットエッチングは機械的な加工をおこなわないので上記のような問題が生じません。続いて、ウェットエッチングの工程について詳しく解説します。

ウェットエッチングとは

ウェットエッチングは、金属が薬品に溶解する現象を利用したエッチング方法です。例えば金属板に丸い穴を開けたい場合は、穴を開ける部分以外を溶けないように保護します。そして、保護されていない露出している金属部分だけを溶解して穴を開けます。

詳しい工程は、以下の通りです。

  1. パターンフィルム(露光用原版)を作成する
    パターンフィルムは、エッチング加工する金属板に保護膜を作成する際に被せるフィルムです。フィルムには、作成するパターンと同一の形状が作製されています。例えば、金属板に丸い穴を開けたい場合は、所定の位置に丸い穴パターンがあるフィルムを作成します。
  2. 金属板の準備・前処理をする
    金属板表面をきれいにして後工程のフォトレジストの密着度を高めます。
    具体的には脱脂や酸洗および水洗などをおこない、金属板表面に付着している油分やほこりを取り除くとともに、金属板表面を活性化させます。
  3. 金属板の上にフォトレジストを成膜する
    例えば、フィルム状のフォトレジストをラミネートしてフォトレジスト層を成膜します。
  4. パターンフィルム(露光用原版)をフォトレジストに被せる
  5. フォトレジストを露光させてパターンフィルムの形状を転写する
    フォトレジストに光を当てると、パターン形状通りに露光されます。
  6. フォトレジストを現像する
    現像すると、フォトレジストで覆われていない部分の金属面が露出します。
  7. 薬品で溶解する
    金属板の露出している部分を薬品で溶解し、除去します。
  8. フォトレジストを除去する
    金属板を保護していたフォトレジストを除去し、所定のパターンが形成された金属板を取り出します。
  9. パターンが形成された金属板を洗浄および乾燥する
    金属板の洗浄・乾燥をおこなうとともに、品質検査を実施します。

以上のような工程を経てウェットエッチングによる加工がおこなわれます。

 

工程をみてわかるように、ウェットエッチングでは機械的な加工を施しません。そのため、レーザー加工や切削加工のような不都合は生じません。

エッチングに適しているステンレスは?

先ほど述べたように、ステンレスにはいろいろな種類があります。その中でもオーステナイト系ステンレスのSUS304が最もウェットエッチングにより加工されています。エッチング加工されるステンレスの8割近くがSUS304です。

SUS304の主な特徴は以下の通りです。

  • 耐食性が高い
  • 耐熱性が高い
  • 加工性がよい
  • 非磁性である
  • 美観性が高い

順番に解説します。

耐食性が高い

SUS304はクロムとニッケルの含有量が高い鋼です。そのため、優れた耐食性を有しています。具体的には、酸や食品酸性に対する強い耐性をもち、腐食やさびに対しても比較的耐久性があるのも特徴です。

耐熱性が高い

SUS304が属するオーステナイト系ステンレスには、高温下での強度低下が少なく耐熱性も良好という特徴があります。低温に対する耐久性もあり、極低温下で使用しても脆化を起こしません。

加工性がよい

SUS304は、冷間加工に適しているため、加工性がよいのも特徴です。

非磁性である

SUS304は一般的に非磁性材料です。磁石に引き寄せられないため、磁気を避けるべき電子機器部品などに好適です。

美観性が高い

SUS304は、表面仕上げが容易で、美観的性が高いという特徴も持ちます。

このような特徴をもつSUS304は様々な分野で使用され、特に食品産業、化学プラント、建築、医療機器、キッチン用具などで広く利用されています。この中でも微細な加工を必要とする医療機器の部品や電極およびフィルターなどはエッチングにより製造されるケースが多く見られます。

ステンレスのエッチング加工の具体例

この章では、ステンレスのエッチング加工の具体例を2つ解説します。

ステンレスのエッチング加工の具体例その1

この例ではスケールをエッチング加工により製造しています。

以下に製品の写真と図面の写真を紹介します。

ステンレス エッチング加工 スケール 板厚0.3ミリ

図面はこちらです。

ステンレス エッチング加工 スケール 図面

こちらの例ではスケールを作成しています。

  • 材質SUS304
  • 板厚 0.3ミリ
  • 長さ 16センチ
  • 社名は穴径φ0.2ミリの抜き穴を多数加工して作成
  • クリップ部分は除去加工で作成

このように、厚さの薄いステンレスに微細な直径の穴加工などが可能です。

この製品では、貫通および微細貫通、ハーフエッチングやソフトエッチングなど様々な技術を使用しています。

引用:https://www.chemical-print.co.jp/topics/20241009-1/

ステンレスのエッチング加工の具体例その2

この例ではウエットエッチングで金属板を厚さ方向で途中まで除去し、浮彫にしたハーフエッチングと加工部分の表面の風合いを変更する梨地加工をおこなっています。

以下に製品の写真と図面の写真を紹介します。

ステンレス ハーフエッチング 板厚0.5ミリ

図面はこちらです。

肉球 測長寸法 ステンレス エッチング

通常のウェットエッチング加工では金属板の両面から溶解させ板を貫通する穴や溝を形成します。これに対して、ハーフエッチング加工は片面のみをエッチング加工する方法です。これにより、穴や溝は板を貫通しない形状となり、一度の工程で段状やポケット状、溝、流路などの加工が可能です。この貫通しない穴や溝の深さは、一般的に板厚の60~70%程度の深さになります。ケミカルプリントはハーフエッチングの貫通しない穴や溝の高精度の深さ調整を得意としています。

梨地加工とは、金属表面を梨地状態にして光沢を無くす加工です。梨地処理はウェットエッチングを施す際に、微細な凹凸を均一に形成させる処理です。無方向性のつや消し仕上げができます。表面の風合いの変更はもちろん、鋭角なコーナーを滑らかに加工することも可能です。表面を梨地にすることで、他の素材との密着性が向上するケースもあります。

こちらの例ではステンレスの板材に貫通しないハーフエッチング加工を施しました。片側には表面にソフト処理加工を施しています。この例では、ソフト処理によって肉球のパターンのコーナーエッジを滑らかにしています。

引用:https://www.chemical-print.co.jp/topics/20241128-01/

ステンレスのエッチング加工なら豊富な技術・経験を持つ株式会社ケミカルプリントへ

ステンレスの精密加工をご検討の方、ウェットエッチングでの加工を検討なさってみてはいかがでしょう?

株式会社ケミカルプリントは、60年にわたりエッチング加工をはじめとした金属加工に向き合っています。60年の間に様々な用途や品質基準をクリアしてお客様のご要望に応えてきました。経験に裏打ちされた技術・経験や実績は、きっとお客様のお役に立つことでしょう。

株式会社ケミカルプリントは、微細・極小・極薄製品の加工を得意としています。特に5ミクロン厚の極薄製品や、0.1mm未満の穴あけ加工など加工限界を狙ったエッチングを高精度で提供しているのが特徴です。

経験豊富であることから、加工方法についても知識や技術を多く持ち、オーダーされた方法以外の方法を提案する提案力も持っています。実際の加工も熟練したスタッフが高い技術力で効率的におこない、お客様にご満足頂けると思います。

まとめ

今回の記事では、ステンレスの特性、加工方法としてウエットエッチングを利用できることを解説してきました。微細な製品や高精度な形状の加工、高精度の表面粗さが求められる加工の場合にはエッチング加工が非常に有用です。具体例もお見せしましたので、ご納得いただけたと思います。

ステンレスの精密加工にお悩みの方、一度ウェットエッチングでの加工をご検討頂いてはいかがでしょう?

その際には、60年にわたってエッチング加工をおこなってきた信頼のおける株式会社ケミカルプリントに相談してみてください。きっと、あなたのご期待に応えられると思います。

無料相談

試作品・サンプル

お問い合わせはこちら